今日読んだ論文は、 “Temporally Coherent Sculpture of Composite Objects ” by Sampaio , Artur P.; Chaine , Raphaëlle; A.Vidal, Creto; Cavalcante-Neto, Joaquim B. です。
複合形状のスカルプティングについて
この研究は、以下のように、小さな部品を集めた集合体(CompEl)をリアルタイムにモデリング・変形するための手法を提案しています。
from Temporally Coherent Sculpture of Composite Objects page2
点描やtexture-bombing(テクスチャに回転や反転をかけてランダムに敷き詰める方法)などすでに小さな3Dオブジェクトの集合として表面を表現する手法はいくつか存在しています。しかし、これらは連続性を保って変形させるには、時間がかかりリアルタイムには向いていません。
研究の新規性
以下の技術を利用した、リアルタイムのCompElsのスカルプティングおよび視覚化
経験的な(物理的に正確ではない)描写
物体同士の物理的に正確な干渉を計算すると、複雑になりリアルタイムで計算するには時間がかかります。そこで、この手法では、経験的な(empirical) 描写を用いています。システムは、quasi-uniformメッシュという一様にサンプリングされたメッシュで表現された形状の、外側の層に注目します。変形した際に、メッシュ上のサンプリング点が増えれば、システムは、表面が引き伸ばされたことを検知して、新しいCompElを下の層から押し出して追加します。
quasi-uniformメッシュは、以下の閾値dとtで定義されます。 d : 2つのサンプリング点の最長距離です。点と点の距離が変形によりこの値より大きくなった場合は、エッジ分割などの処理が必要になります。 t : 2つのサンプリング点の最短距離です。この値より小さくなった場合は、エッジの崩壊などの処理が必要になります。 詳細は、 “Freestyle: Sculpting meshed with self-adaptive topology ” を確認してください。
CompElsは、サンプル点に従ってメッシュの三角形上に配置されます(1対1ではありません)。それぞれのCompElは3つのパラメータを持ちます。重心の(割り当てられている三角形に対する相対的な)座標、 深さレベル、 (割り当てられている三角形に対する相対的な)回転角度の3つです。
深さレベルの制御による連続性
この研究では、視覚的な連続性が保たれています。CompElが新たに追加される際には、まず深い層で生成されて、その後内側から押し出されて表面に現れます(突然何もないところに出現するわけではありません)。また、余分なComElは、まず深い層に押し込まれ、その後削除されます。
エッジの修正に伴うCompElの移動
エッジ分割 Edge Split
エッジの長さが閾値dより長くなった場合、新たな頂点が追加され、エッジは分割されます。この場合、CompElの重心は動きませんが、割り当てられる三角形が変わるため、新たに重心が計算されます。
change of the ComEl’s barycenter in Edge split processing © 2019 Nako
エッジの崩壊 Edge Collapse
エッジの長さが閾値tより短くなった場合、エッジ崩壊が起こります。対象のエッジとその両端が含まれている全ての面が以下のように再構成されます。そして、それぞれのCompElは新しくできた面に投影されることになります。
Edge collapse © 2019 Nako
以下のようにとった点P, P’を用いて、元々別の三角形に割り当てられていたCompEl(青)が、新しくできた点(崩壊したエッジ上に位置するV’)を含む新しい三角形の中に含まれるよう割り当てられます。また、元々あったCompEl(赤)は移動します。
e.g.1 left side of deleted face change of the ComEl’s barycenter in Edge collapse © 2019 Nako
e.g. 2 right side of deleted face © 2019 Nako
エッジ反転 Edge Flip
エッジ反転はエッジを削除したり分割することなく、点の長さを適切に保つための手法の1つです。
Edge flip © 2019 Nako
Tchange of the ComEl’s barycenter in edge flip © 2019 Nako
Topological genusの変更
Topological genusの変更は2つの環の頂点間結合によって行われ、頂点の座標は移動させずに距離を適切に保つよう頂点が再接続されます。※Topological(位相の) genus(種数)の適切な日本語訳が分からないためそのまま記載しました
レンダリングに関する技術
変動性 Variability
CompElsはインスタンスベースのモデリングによって表示されます。(つまりそれぞれのCompElが1つの元のオブジェクトのインスタンスとなっています)。異なるテクスチャを使用したり低周波のノイズを使用して、各インスタンスは視覚的に異なって見えるよう微妙に変化が与えられます。
from Temporally Coherent Sculpture of Composite Objects page8
背面CompElのカリング
もしグラフィックカードにバックフェースカリング(カメラに対して背面にある見えない面を描画しないこと)の機能がない場合には、CompElの重心に最も近い位置にあるメッシュの法線ベクトルの方向とバックフェースにある視線方向を比較して、裏面にあるCompElsをビューの範囲外に移動します。
CompEl squish
CompEl squish とは、CompEl同士の視覚的な重なりをなくすための方法です。CompElをある比率でキャンバスと垂直な方向に押しつぶすことで、CompElの厚みは小さくなり、見た目には重ならなくなります。
from Temporally Coherent Sculpture of Composite Objects page9
結果
結果の画像は元の論文に記載されています。